4月21日の信濃毎日新聞は、下のような憲法に関する注目すべき記事を載せていた。
「憲法『あまりよく知らない』3割超」(本紙読者アンケート)という信毎紙の「憲法」シリーズの記事だ。
とくに注目したいのは、「憲法は何のためにあると思うか」との問いに 68%が「権力を暴走させないため」と、最多であったことだ。
同紙が言うように、無作為抽出による調査ではなく信濃毎日新聞の読者であるから、それなりの見識を持った対象者であったことは間違いない。
信州大学の小池准教授のコメントでは、まず「日本国憲法の出発点は権力を暴走させないことだ」ときっぱり。この調査からは「(読者には)憲法の本質的な考え方は理解さえている」ことが分かるとしつつ、「改憲論議が浮上している今こそ憲法の基本的な考え方を再確認すべきだ」と強調していた。大切な点だ。
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現行憲法が生まれる背景として最も重要なことは、アジア・太平洋戦争で敗北し連合国に無条件降伏(天皇を免責することを示唆しつつ)したことと、その際に受け容れたポツダム宣言にある。
ポツダム宣言の各項目はどれも重要だが、いま注目しておくべき項目を挙げるとすれば、次のようになるだろう。(下はアジア歴史資料センターより)
=== ポツダム宣言 ====
第6項目
吾等は無責任なる軍国主義が世界より駆逐せらるるに至る迄は、平和、安全及正義の新秩序が生じ得ざることを主張するものなるを以て、日本国国民を欺瞞し、之をして世界征服の挙に出でるの過誤を犯さしめたる者の権力及勢力は、永久に除去せられざるべからず。
第10項目
吾等は日本人を民族として奴隷化せんとし、又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非ざるも、吾等の俘虜[捕虜]を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては、厳重なる処罰加へらるべし。日本国政府は、日本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし。言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし。
第12項目
前記諸目的が達成せられ、且日本国国民の自由に表明せる意思に従い、平和的傾向を有し、且責任ある政府が樹立せらるるに於いては、連合国の占領軍は直に日本国より撤収せらるべし。
第13項目
吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、且右行動に於ける同政府の誠意に付、適当且充分なる保障を提供せんことを同政府に対し要求す。右以外の日本国の選択は迅速且完全なる壊滅あるのみとす。
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ポツダム宣言第12項目で、「日本国民が自由意思で平和的政府の樹立に責任を負う限りで占領政策を終了する」としていたが、「平和的政府」の保障となる憲法制定に日本政府が全く無能力であったことが判明するにつれて、GHQの対応は変化せざるを得なくなる。
むしろ、当時政党や民間団体、個人などが提案した憲法草案の方がはるかに民主的な内容を含んでいた。
これらのことについて、ジョン・ダワー「敗北を抱きしめて(下)」は次のように表現している(129ページ)。
日本政府は、みずからの頑迷さに対し、恐るべき早さで代償を払わされることになった。2月1日から3日の間に矢継ぎ早に行われた一連の決定において、マッカーサーと民政局の側近は、日本政府にはポツダム宣言の要求を満たすような憲法草案を作成する能力がなく、SCAP(連合国最高司令官)が指導しなければならないと結論した。
ジョン・ダワーはこれについて、民主的な声が湧き上がっていた時期に、「日本国国民の自由に表明せる意思」に従うのではなく「なぜ日本人に自らの手で民主的な政府を樹立させなかったのだろうか?」と問い、その答えは「天皇の地位に関わっていた」と書いている。
それ以上は、ここでは紹介しないが、現在改憲を要求している日本の政治家たちは、こうした歴史を頭に置いているのだろうか。
改憲を叫ぶみなさんは「押しつけ憲法」とよく言うが、彼らは「押しつけられた」側の子孫たちであり、自らの意思で民主的な憲法を生み出す能力がなかった側ではなかったのか?
改憲を求める皆さんは、何故に現法憲法がこのように制定されるに至ったのか、成立史の一コマでもひもといてみるべきではないのか?





